ソーイング
Akari Chika

愛しい人の
前にいると
鼓動がトトトト、ト と
ミシンのように
動き出す

愛しさへ向かう
なかに
なにかを
縫い合わせていくのね

スカートが
できるなら ぐるりと
花を
つけるわ
鳥の 模様も
絡まる蔦の先も

こんなに
へたで
ごめんね
糸が飛んだり
針が止まったり
戻れないから戸惑うの

輝きを形作ることはできないね

たった1度の
人生なの
空架かる虹も
こうして縫えたら
今は遠くにいるあなたと
一緒に見ることができる

たくさんの
泡が立つ会話から
枕のような
安らぎを見つけて
寝言がもれる

愛してる
愛してる
寝言だよ
すこしも
伝わらないからね

鼓動が
無限なら
大きな世界を縫おう
まだ行ったことがない場所も
あなたと一緒に見られるから

シンパシー
偉そうに
物語の続きなんて
語っていても仕方ない

動き出そう
あなたへ向かって
針を進めよう

今日は見当たらない糸の終わりも

それが運命だ
なんて
絶対言わせない

わたしが
ありったけの
優しい毛布
作ってあげる
今も寒がりのあなたを
そのまま受け止めてあげたいから

心臓が
壊れないうちに
絆を縫えたら
いいのにな

未来が叶わないから
過去へ逃げよう
なんて言わせない

ひと針も無駄なステッチなんてない

ナーバスだったから
ふざけて
気球を縫ってみた

広がっていく空に
鼓動がトトトト、ト と
ミシンのように
動き出す

蒸していく
愛は蒸気
水を足されて
舞い上がる

早く行きたい
早くあなたの
トトトト、ト となりにね



自由詩 ソーイング Copyright Akari Chika 2010-10-17 23:58:03
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