足掻き
寒雪



日出ずる国から
新しい太陽が打ち上げられる
球形状に落ちてくる
光のドームを合図に
地中から飛び出す
過去を捨てた子供たち


顔を洗って洗面台に向き直る
その間にも子供たちは
よく磨かれた鏡の中を這い回り
合わせ鏡をすれば
午前零時に飛び出してくる悪魔の
刹那浮かび上がるプロフィールを
原色に模したコスチュームで
冴えない色使いの街並を
笑いながら明るく染め上げる


脱皮した風景を前に
捨てられた過去を抱きしめる人は
肩を並べて通りを歩む
街が翅を携えて夏が終わる頃に
受け入れてくれそうな
優しい青を燻らせる空に旅立っていく時
それでも取り残された街の残骸を
膝を折って一つ二つと手のひらに集め
剥げかけたタイルに残骸を取り付ける
街が戻って来ないことはわかっている
それでも温まった過去の
眼を閉じて横たわる棺桶を用意するため
報われない心をかき集める


明日の雨が街の足跡を洗い流しても
黙々と粛々と拾い集める
明日のパノラマに写るために


自由詩 足掻き Copyright 寒雪 2010-10-17 09:22:35
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