テンプレート
あやさめ


彼らの背中にシーニュが張り付いている


左から順番に番号札をつけて読み上げられるタイルの床のふりして
絵の具のパレット積み重ね 色を次々塗りたくる
キャンバスも綾織りの凸凹を気にするような縦横しかない

日本語の辞書にも単語が少ないままなので
数字と英語の組み合わせで性格が始まる
1秒ごとに確率が変わっていく操作の前に
鳥になった見かけの平面をテンプレートと考えてしまう

  繋いだケーブルの向こうから整地された道路の上まで
  規則的に0と1の信号を意味して手足だけ動いていく


8方向しかないベクトル操作を繰り返して進めば
彼らスカラーの集合たちの上で泣き笑いしていくような
そんな模擬戦争は終わりもなく始まりもないので

窓の下で渋滞しているベクトルの座標軸はいつまでも動かず
押し相撲ばかり繰り返す中で流れていくだけの時間


  次の水たまりに16の月が沈んだまま映る
  水たまりも16に分解されてすぐにタイヤの跡だけになる
  髪の毛ほどの長さで彼らの振動が月に向かって打ち上げられても
  全方向に輪になって広がってすぐに消えていくだけの時間


シンボルに囲まれてインデックスをばら撒いた生活に嫌気がさして
次のテンプレート探して他人の背中ばかり眺めてみていた
空気と背中の間に服があって夢を見ているような分子は
位置だけ示したとして誰にも追いつけない動きに戸惑うだけ


終わりも始まりも無い世界の区切りと親切なラベル貼り
半球の形をして勝手に図化されたシステムが落ちてきて
見たこともない生き物に誰かが勝手に学名をつけては
特徴をずらずらと書き並べて初めて区別のつく状態

  儀式はいつも「名付け」から始まり毎年同じような雰囲気で
  忘れてしまう前にもう一度切り分けで記憶の中から出てくる
  そして記憶は最後に記録の中で綴じられてそこで仕舞いこむ
  目の前にないものもそこで閉じて次の水たまりがはじける
  

目の前に生きているベッドの上にある誰かの顔をした関係と
このテンプレートを比べてレンコンの茎みたいな稜線を引こう


彼らの背中に今日もシーニュが貼りついている  


自由詩 テンプレート Copyright あやさめ 2004-10-21 22:47:48
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