QBK
はだいろ

だけど
急にボールが来たら
ヤナギサワじゃなくったって
とんでもない方向に
シュートもするもんだよ
ねえ、
才能のない
ぼくやきみやきみよ


あの日
横断歩道で
あの子にニッコリ笑いかけられたとき
人生の色がすべて
変わるような気がしたよ

ああ
それは努力の正しさの証明なんかではなく
まして、どんな準備をしたかということでもないよ
そのときぼくは
それまで生きてきたつづきの
ピッチのど真ん中で
いきなり目の前の、
がら空きのゴール前に
絶妙の、最高のパスを受けた
迷えるストライカーのようなものさ


ああ
ただ軽く
ただ、やさしく
ボールを合わせるだけでよかったのに


シュートは
とんでもない方向に
外れてしまったよ
たぶん
やじるしの先、永遠の方向に


だけど
ヤナギサワにとって
ほんとうのチャンスは
ただあの一回きりだったのだろうか
ねえ、
才能のない
きみやぼくやぼくよ


ほんとうの
シュートは
いつか
才能ではない輝きで
枠も網もないゴールに向かって
間違いなく
放たれるものでなければ
ならないのではないだろうか

ああ
それこそ
正しい方向へ
正しいスピードで
いつか
永遠ではなくて
いま、ここに、という名のもとに








自由詩 QBK Copyright はだいろ 2010-10-14 21:57:29
notebook Home