ナイチンゲール
石瀬琳々

あなたを思うのは
まだ青い霧がたちこめる夜明け前
それとも名も知れぬ花が香る陽のひかり
夜がやってくる吐息のまにまに


あなたを求めるのは
後れ毛が風に震えるようにひそかに
梢の青い葉に赤みがさすように
この胸の押さえきれない血潮から


ナイチンゲールが鳴いた、


あの時から風が吹いて私の窓辺を揺さぶる
時には風に抗い耳をふさいでも
その声はいつの日も胸の奥に響いてくる
痛みに似た喜びが広がるのだ
朝の初めの水滴がこぼれ落ちて
水面みずおもてにくっきりと波紋を描くように
深く深く奥底に浸透するように


私のナイチンゲール
その胸から血を流しやさしく囀る
運命の棘よ 白い花を真っ赤に染めて
あなたを感じ私もまた血を流している


夜明けの青い夢の中であるいは




自由詩 ナイチンゲール Copyright 石瀬琳々 2010-10-13 13:39:49
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