月と不死
楽恵

望月

謡うもの。
遥か彼方より天が下まで。降れて。
方位は陽の沈んだ場所より東であり
影から岬の先端まで。
いつか必ず絶えるからこその
願い。
月を枕にし給いて
気の踊り。
ついに
夜の始まり。


霊薬

唱えるもの。
ふたたびよみがえる為に。
水のうえを風が吹いている。
魂代を家土産にして
地中に戻り
神の妻になるがいい。
残されて
空から降ってくるのを待つ。


月夜見

思うもの。
昔、天地の初めに喪失あり。
また、死より
逃れて変若水を飲む蛇が這う。
君の霊力ある限り。
失ったまま
西方に佇み
昇ってくる場所を覗き込む。


*『おもろそうし』より引用・参照箇所あり




自由詩 月と不死 Copyright 楽恵 2010-10-12 19:07:23
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