あしたバスを釣りに
番田 

ブラックバスをルアーで釣るのは、初心者にとっては難しいことだと思う。
ミミズなどではなくルアーを使っているのでは魚は釣ることはできないのではないか、という先入観があるからだ。
私は中学生の頃、テスト期間中などに学校が終わるとよく釣りに行った。24時間勉強はしていないというのがその理由ではあった。
私もバス釣りをはじめたのは寒い冬ということだけあって、ブラックバスは長い間、なかなか手にすることができなかった。
息の白い、酷寒の中を自転車を転がし虚しく家に帰ったものだ。
友達もまったく釣れていなかったので、本当にルアーを使ってバスが釣れる、ということ自体が信じられなかった。
しかし友達はポツリーと、言った。
あの日釣りに行った時に釣れたことがあるんのだと、遠くを見たー。


バス釣りの初心者は良くワームと呼ばれるゴム製のものを使いたがるが、信用度が高いからだろう。
その色のバリエーションはかなり豊富で、赤や青、黄色や黒といった具合だ。
そう、はじめて買ったのは青の赤ラメ。
形はミミズの形をしていたり、小さな昆虫やヤモリを思い起こさせるものもある。また、黒などは魚から見えないとよく考えられて売れ残っていたりするが、水中では割と怪しく目立つのである。
しかし、初心者には特にスピナーベイトと呼ばれるルアーで魚が釣れるのと信じるのは難しいことだ。
とても魚や虫の形には、見えないのであるー。
当時の私にも針にゴムのフリフリをつけただけのガラクタようにも見えた。


しかしある春先の日にミノーという、あの魚を模した形のプラグを使っていると、私の巻いていた緑色の糸が素早く横に走った。
ドバッ
突然のことに、私は驚いた。
巨大な魚が目の前でジャンプしたのであるー。
そうしてなんとか、動き回る魚を水面から引き上げた。初めてそれをつり上げた私は、後で見ると本当にもの凄いー引きつったような笑顔をしていたのを覚えている。
そう、友達が撮ってくれたーー、あの、吹き出してしまう私の顔はまだあるのだろうか。




散文(批評随筆小説等) あしたバスを釣りに Copyright 番田  2010-10-09 01:59:19
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