そうは
森の猫

鈍い痛みは
その日もつづいていた

昼を過ぎてから
にわかに痛みは強くなってきた

主治医に電話する
すぐ 来るように

あたしは
幼いふたりの子供と
タクシーに乗り

二駅離れた
母の家に向かう

鍵を開けると
母は留守中だった

6つの息子に伝言し
病院へ待たせたタクシーで
向かう

 残念ですが
 こんかいは あきらめましょう

点滴され
診察台の上で
痛みに耐える

たぶん
数分でおわったその作業を
あたしのカラダは
一生忘れない

出産でもない お腹の痛み
悶絶しるしかない
這うような痛み
意味を感じない痛み
二度と感じたくない痛み

作業がおわり
診察台で
まだ 点滴に身を
まかせていると

夫がかたわらにいた

家族みんなで
待ちに待った
第3子の
誕生のはずだった



そうはされた
子は

もう透明であると言う
膜もあたしには
みえず

トレーのなかは
羊水ばかり

吸収されたのだ
母体のなかへ

33の厄を
吸い取ってくれたかような
子にいとしさを
おぼえた

また
おいで
こんどは
ママ 
元気なカラダで
待っているから

春のはじめだった


自由詩 そうは Copyright 森の猫 2010-10-07 14:06:10
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