父親の親指
はな

浴室の隅に転がっていたのは
父親の親指でした

切り落としたのは
たしか
ぼくです

浴室の空気は
薬物にまみれた粒子で満ちて
記憶は赤く爛れている

浴槽からは温かなお湯が溢れて
ピンク色の吐瀉物が流されてゆく

死んだかな

思ったので

ぼくは

父親の親指を
父親の親指を
父親の親指を

切り落としたのでした


自由詩 父親の親指 Copyright はな 2010-10-02 08:28:57
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