渋谷の喫茶にて
番田 

夜の街角には見知らぬ何者かがいないものだろうかと
ぼんやりと私は一人 非常に古ぼけたアパートの部屋の隅っこで、
ぼんやりと一人で日が暮れるまで立ち尽くしていたのかもしれない
そのラジオから 今日も流れ出されてくる装飾されたいくつもの音楽の中で 
独身の私は一人でぼんやりと聴かされ続けている
その一室で いつまでも いつまでも 聴かされ続けている  
身のかじかむ渋谷の冷たい風のどこかへと流されて行く私は
表参道の冷たいサラリーマンの視線の中を走り抜けて行く
ぼんやりと無数に中を歩いて抜けて行く二人連れになったカップルたちの通りで
オレンジ色のカラフルな傘を捧げた人たちと一緒になって
いくつもの二人組のカップルになって そこに誰もが
時代の流れの中を通り過ぎて行くのかもしれないと力強く見守っていた
この国からの機械技術によってぼんやりと生み出された 
街角に立ち現れた いくつもの生産された自動車すらも
跡形も痕跡もそこからはすでに無くなった金曜日の夜に、
一日中 そこで 私は見続けている、
おびただしい現実としての連続的かつ不規則的な機械音を
聞かされ続けている 私の病気がちな精神はぼんやりとアパートで
流されて行く 私はその油にまみれたロボットの機械じかけのからくりを 
ひとりぼっちでその音楽を じっと凝視しつづけているのだ


自由詩 渋谷の喫茶にて Copyright 番田  2010-09-29 03:41:35
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