三叉路のひと
恋月 ぴの
立ち止まるひと
立ち止まらないひと
その違いってなんなんだろうね
わたしなんか立ち止まらないひとだと思ってたのに
こんなとこに5年間も立ち止まってしまっていて
指先器用でギターとか爪弾けるなら
この三叉路の傍らにでもしゃがみこんでさ
行き交う人びとの視線なんかおかまいなしに
好きな曲のひとつでも歌うんだけど
わたしって日がな一日何してたんだろうね
三叉路から眺める夕焼けは恐ろしいほどに美しく
ひとりで生きる寂しさなんか忘れてしまいそうになるけど
わたしの意志とは無関係に明日は必ず訪れる
それでもこの三叉路はわたしのヤサみたいなもので
街路樹は優しげに色づいてくれて
立ち止まるひと
立ち止まらないひと
いつかは立ち去らなければならないとしても
耕したばかりの畑に秋蒔きの種でも蒔くように
この三叉路でわたし、着古した長袖シャツに袖を通し
乱筆乱文お許しくださいとあなたに宛てた思いに添える