歯形
たもつ

 
 
パンを一口かじる
柔らかくて美味しいので
生きた心地がしない

少年が救急車の真似をして
変電所の方へと走っていく
その距離と速度の先に
助けなければならない人がいるのだ

救急車に乗らなくても
人を助けることができる
そしてどんな手段を使っても
助けられない人がいる
いつか私も知ってしまった

パンの歯形がこのまま化石になっても
それは私の生きた証とは程遠い
うっかり足を滑らせて
パンの中へと落ちていく
 
 


自由詩 歯形 Copyright たもつ 2010-09-23 19:09:03
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