スケッチ 3 (胡桃の中の秋)
るか
胡桃の中の絶唱を聞いたか、きみは、秋が永遠へと
墜落する夕暮れの胡桃の中の絶唱を。この哀しみが
どんな故郷から出来するのか私たちは知らない、た
だどこまでも透明なワインのような哀しみの中に秋
の永遠は閉ざされている、滲む涙を忘れた私たちに
残されている時間がどんなに僅かなものであったと
しても、私たちはこのアルコールの涙の成分がどん
な果実の深い傷から齎されたものであるか、地を這
って、探求しないではいられない。冷気を含んだ茜
色の風が、私たちの国の大樹を揺さぶり、胡桃の中
で絶叫が内部から殻を粉砕する破裂音が、そこでも
ここでも、断続的に反復されている。私たちの魂と
はおそらくいつもそのような形をしている。空虚は
飢えを呼び、飢えは満たされることを求めて悲鳴を
あげ、内部から硬質な殻を粉砕し、その香気を運ん
でゆく風が風景を秋に染め上げる。秋の根拠は私た
ちの空虚であり、貪婪な魂は慰めに本質を要求して
やまない。求めよ、求めよ、私たちはみんな飢えた
一人の子どもであるから。