スケッチ 3 (胡桃の中の秋)
るか

          


          胡桃の中の絶唱を聞いたか、きみは、秋が永遠へと
          墜落する夕暮れの胡桃の中の絶唱を。この哀しみが
          どんな故郷から出来するのか私たちは知らない、た
          だどこまでも透明なワインのような哀しみの中に秋
          の永遠は閉ざされている、滲む涙を忘れた私たちに
          残されている時間がどんなに僅かなものであったと
          しても、私たちはこのアルコールの涙の成分がどん
          な果実の深い傷から齎されたものであるか、地を這
          って、探求しないではいられない。冷気を含んだ茜
          色の風が、私たちの国の大樹を揺さぶり、胡桃の中
          で絶叫が内部から殻を粉砕する破裂音が、そこでも
          ここでも、断続的に反復されている。私たちの魂と
          はおそらくいつもそのような形をしている。空虚は
          飢えを呼び、飢えは満たされることを求めて悲鳴を
          あげ、内部から硬質な殻を粉砕し、その香気を運ん
          でゆく風が風景を秋に染め上げる。秋の根拠は私た
          ちの空虚であり、貪婪な魂は慰めに本質を要求して
          やまない。求めよ、求めよ、私たちはみんな飢えた
          一人の子どもであるから。




自由詩 スケッチ 3 (胡桃の中の秋) Copyright るか 2010-09-22 11:50:24
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