社宅の記憶
森の猫

なぜ 悪夢ばかり
みるんだろう


社宅に10年いた
暗黒の時代

圧制された 
会社の配列

同じ部屋
同じ間取り

真向かいに住む家族の
給料さえもわかってしまう
プライベートのなさ

その中で
あたしたち家族をイジメ抜いた
親子がいた

いい子ぶっていた あたしは
それは 相方の意向でもあったが
八方美人な付き合いをしていた

決して 他人の悪口を言うな

呪文のようなその言葉で
縛り付けられている 生活

あたし達家族の生活を観察し
一々 嫌味を言い放つ

その娘たちは
あたしの幼い娘を突き飛ばし
女は
あたしたちを陰で罵り
息子の障害を蔑んだ

すごい節約家で
”マンションを買い 社宅を出る”
のが 口癖の女

相方と年の差のない
女の連れ合いは
いつまでも 昇格せぬ営業マン

何もかもが 気に入らなかったのだろう

夢の中で
女はあたしに カミソリを送りつけ
暴言の数々をぶつける

あたしも負けずに
大声で言い返していた

なのに 苦しい
ひとを 蔑むことに
慣れないあたしは
その言葉に傷つく

黒猫が橋から
落ちてゆく

自分の叫び声で
目が覚めた

脂汗をかいている

もう 今はない
社宅

悪夢の暗示
今の苦しみ


自由詩 社宅の記憶 Copyright 森の猫 2010-09-22 01:47:00
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