聖奠
黒い翼

高森草庵の休耕田
トンボ池の辺
俺たちはマコモの葉陰で出会った
その隠れ帯の中心に
少しずつ 少しずつ
確かめるように近づいて
恋人の懐に潜り込んで
伸びた4対の肢に触れる
特に交接するでもなく
俺にすべてを委ねてくれるなら
その放射状に伸びた肢ひとつひとつ
恋人の周りを回りながら
さわさわ すりすり触れてあげる
実は俺たち 仲が良いんだぜ
もう一度 確かめるように近づいて
すっかり気分を良くした恋人の
今度は恋人の背中に回って
身体を重ねてみる
大きな身体は卵を持っているんだ
大人の女のふくよかさに
俺の旅の終着を知る
やっぱり今日が交接する日かな
もう一度 恋人に近づいて
まだ気分を良くしてくれているのなら
古から繰り返されてきた
約束の瞬間を交わそう
青空のお日さま
水に映ったお日さま
俺たちに宿ったお日さま


自由詩 聖奠 Copyright 黒い翼 2010-09-20 19:43:46
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