彼岸入りに
within

穏やかな夏の青い空に
幼い頃聞かされた赤く染められた天地が
嘘のように
頭を刈った少年たちの
淡い掛け声が響いた

誰もが歩む死への行進
だけど殺し合いは御免だ
「兄弟仲よに分けないかんで」
と叱った母

九月の虫の音に
奪い合いに巻き込まれた者たちは
鎮まっているだろうか

緋色に染まる日暮れの墓前
束の間の生に
訪れるであろう静かな時に
掌を合わし悼む蝶々が一匹


自由詩 彼岸入りに Copyright within 2010-09-20 06:32:28
notebook Home