boring man
Akari Chika

あと何分
同じ事 話し続けるんだろう

向かい合わせで
喋るなんて
テーブルを発明した人はデリカシーが足りない

雨に叩かれる窓
明かりが強すぎる店内
雑然と
雑念が
入り交じる

“自分のスタイルを探し続けてる”
向かいの男は
もう何分も
同じ事を話し続けている

添えられた
角砂糖が
崩れ出すほど
退屈だ.

果たして
どこまで
私の耳は耐えてくれるだろうか?
脇の帽子を握り締める

深呼吸
する場所
ください

ふと
目を伏せた瞬間に
頭をよぎる嫌な予感

私と
この男は
似ている

彼は
『自分の話しかできない人間』で
私は
『他人の話が聞けない人間』なのだ

そこにどれほどの差があるだろう?

あまりの
動揺に
咳き込むと

「大丈夫?」も束の間、彼は再び熱心に話し始めた

“いますぐに携帯を替える必要がある”
向かいの男は
自らを
替える気はないらしい

だけど
そういえば私も
「自分のスタイル」が何かわからないし
「携帯」も替えたいって思ってる

背筋が寒くなるような赤い糸だった

頭を
整理する箱
ください

彼は言う
“これからも自分のスタイルを探し続ける”

私は思う
“自分のスタイルを探し続けるのがあなたのスタイルじゃないの?”

雨が止み
通りの人々に
笑顔が戻るけれど

向かいの男は
もう何分も
同じ事を話し続けている

やはり
退屈だ

磨かれた
スプーンが
曲がり出すほど
退屈だ.


自由詩 boring man Copyright Akari Chika 2010-09-18 23:02:10
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