最後の薄い(未詩・独白)
プル式

目が覚めると氷になっていた
何故氷だと解ったのか解らない
ただいつも透明になりたいとは思っていた

実際氷になってみると大層不便である
声はおろか身動きすら出来ない
時間と共に布団に吸い込まれていく寝汗
不思議と気持ち悪くは無い

はたと気が付く
これは寝汗では無いのではなかろうか
それからは一秒が永遠に感じられ
一分は無限の様な気がした
隣に寝ているであろう妻の
微かな動きに期待を寄せ
それこそ必至に知らせようとする
しかしなす術は無く
全てを運命に任せるのみである

布団からでる音がする
どこにいったのかしら
そんなつぶやきが聞こえる
此処だ此処だと念じるがやはり通じない
行ってしまった妻は水を飲んだのだろう
水の音とカタンという音がした

ふと気が付くと空が明るい
大変に寝汗をかいているが
身体はどこか軽くなった気がする

やあ大変な夢を見たよ
最近忙しさにかまけていた
愛している
いくらでも伝えたい事がある
妻が来る
妻の足が見える
声が出ない

冷たい

そんな声が聞こえた気がした。


自由詩 最後の薄い(未詩・独白) Copyright プル式 2010-09-17 10:47:50
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