ピノキオ
月乃助



( 乾いた木のままでは つらいのです )
( 秋がやってくるなら なおさら )


通り雨の大粒な なみだのような冷たい滴に
もうこれで 夏が終わるのを知りました
すぐにやってくる
温かな紅茶をありがたがる そんな季節が、

天からの慈雨 それは、
想いのすべてをいやしてくれる

だってとか
仕様がないとか言っては
迷いながら うそをついた夏
だから、木人のようにのびたはなを
不器用に削りながら生きてみた

小さな願いに
明日はきっともっとよい日がやってくると
ぎくしゃくした笑顔を向けながら
信じているわけでもないのに
自信のあるようなふりをして言う

糸を切った操り人形の選んだ道は、
遠くからする/うちからする、声に耳を傾け
自分の足元を確かめるように歩くこと

小さな自分への約束が
今度もうそになってしまわないように
はりせんぼんを手にしながら 
そのとげを見つめたり

伝えたいことなど
掌にこんなにもたくさんあるのに、
差し出そうとすると 消えてしまうのをながめたり

樫の木でできたこの体は、
心があったらよいのにね
そうすれば、いつかきっと
人にだってなれるのですから

今はただ、
冷たい雨にうたれながら
少しのあいだ
人になれた時を 夢見ても
よいですか









自由詩 ピノキオ Copyright 月乃助 2010-09-03 07:20:05
notebook Home 戻る