angel
Akari Chika

「おもちゃは卒業ね」

そう言って
取り上げた
三角の積み木

ねえ ママ
わたし笑えてる?
上手に笑えてるかな?

腕に痛いよ
羽根が生えてきた
天使に似合わない
鈍色にびいろの翼

鉛筆を持てば
パパが笑う
「一生懸命にやっているな」

机が欲しいって
本が読みたいって
言えば良い子になれるかな

かかとで
踏み潰したキャンディ
きらりきらりと
嬉しそう。

抱き上げて
くれたなら
空は高いな

でも その気持ちを伝える為には
言葉を勉強する必要があるな
やっぱり鉛筆は必要だ

「広い庭が欲しいわ」

そう言って
見せられた
住宅のチラシ

ねえ ママ
わたし笑えてる?
上手に笑えてるかな?

耳が痛いよ
声が聞こえるの
「天使になりなさい」
神様は味方?

パパは渋い顔で
TVを観てる
「5時のニュースをお伝えします」

目を見てよ
心を読んで
大人は良い子じゃないのかな

片手で
持て余したキャンディ
舐める間もなく
溶け出した。

愛して
くれたなら
世界は広いな

でも この気持ちを伝える為には
言葉を勉強する必要があるな
大きな机が必要だ

「あなたは天使ね」

そう言ってくれたママ
とても上手く笑っていたな
わたしの髪を結って
甘えさせてくれた

パパはやさしく抱きしめてくれた

夕方の
色は
真っ赤なキャンディ

知ってる?

「あのとき
 抱かれて
 嬉しかった」

でも その理由を説明する為には
大人になる必要があるな
もう少し時間が必要だ

ねえ ママ
わたし笑えてる?
わたしは今も天使かな?


自由詩 angel Copyright Akari Chika 2010-09-01 19:23:24
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