震える心
Akari Chika
遠慮がちに
欠ける月を見た
半分も満たすことができず
けれど決して消えない
いつまでも
見ていたい
月だった
ワイヤーを巻かれた幹
黒く浮かび上がる建物
携帯に落とした目線
誰を呼ぶ訳でもなく
荒れた肌撫でて
僕は不意に
死にたくない
死にたくない
なんて
思いながら
本当は
遠慮がちに
生きている
自分に気付いた
震えない心
震えたいのに
月は随分
赤茶けていて
砂漠の夜を思わせる
ずっと
眺めていたい
月だった
例えば
壁中に絵が架けられている
部屋があって
その部屋の隅で
膝を抱えて
泣きじゃくる
子供がいたら
あなたは
美しい絵 と
泣いている子供 の
どちらに
心を
揺さぶられる?
僕は
責任を逃れるように
次から次へと
絵を渡る
油絵の
波立つような
表面に
見透かされた気がしてる
愛されたい
愛されたい
なんて
思いながら
本当は
誰も
愛せない
自分に気付いた
震えない心
震えたいのに
1段ずつ
レンガを積み上げて
月へ続く
階段を造る
それが昔の夢だった
でも
僕が積み上げてきたのは
他人と自分を隔てる“壁”
四方を囲む
防御壁だった
月は随分
遠くにあって
孤高の人を思わせる
言葉を
見失うほどの
月だった