Blackberry
月乃助

町には、
都会の路傍の実を摘み
ジャムを作る女もいるのです。

黒く指をそめながら、
けして与えられるものでも
買うものでもなく
何かを知るために。

立ち枯れる花たちが、
夏色を失っていく季節
触覚を持った虫のように
秋を知れば、

何かをあきらめながら
せわしなく過ぎてゆく
行き先を探すのが大変な
この時代のながれに、

棘だらけの木苺たちは
人をよせつけぬ姿で、
静かに生きていた。

コンクリートを浸蝕する
雑草の強さで咲いていた白い花が、今
人気のない
古びた校舎の裏道に
黒い実をつける 夏の終わり。

棘をおそれては、すべてを飲み込んで
くやしいことを心にためこんでも
我が子のあんなに小さな手が、
大きな安らぎを与えてくれるように、

数知れぬ黒い実をいくつも摘んで
なぐさめにジャムを作れば、
都会に生きつづける意味をおしえてもらう。
そして、

私は、すこしばかりありがたがりながら
ひととき
酸味のきいた甘い想に
我をわすれていたりする。







自由詩 Blackberry Copyright 月乃助 2010-08-30 07:19:39
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