Spice Song
Akari Chika

まどろみの中で目を覚ます
スパイスの風  起きぬけのカレー

わたしの心は溶けてゆく
絶え間なく形変える  水のように

行き交う船は涙を乗せて
遠くの海へと消えていく

聞いて  足跡を  音の鼓動を
聴いて  雨粒を  祈りの声を

あなたの為に帰りたい  何故なら
あなたの為に歌いたいから
甘い果実の歌を

茅の屋根から降り注ぐ
無数の木洩れ日に抱かれて

わたしの言葉を沈ませる
夕闇に鳴り響く  鐘のように

翻る蝶の羽根は
人の心を映す鏡

言って  その先は  果てがないと
云って   約束を  今果たすと

あなたの為に帰りたい  何故なら
あなたの為に歌いたいから
苦い香草ハーブの歌を

砂にまみれた手紙
端の折れたポストカード
油で滲んだ新聞紙

誰かの忘れ物がいつか
誰かの宝物になりますように

微笑みを包んだ  キャンドル・ライト
哀しみを癒した  アロマ・オイル

ひとりの旅がいつしか
みんなの旅になってゆく

宵に数える星が
ひとつ  ふたつ
繋がっていくように

覚えていてね
旅の側にはいつも  あなたが居たことを

飲み干したグラスにしたたるのは
光の水と  影の水
南の夢と  西の嘘

あなたの為に帰りたい  何故なら
あなたの為に届けたいから
この身体の温かい源を
あなたの胸へ
声に乗せて


自由詩 Spice Song Copyright Akari Chika 2010-08-24 13:21:04
notebook Home