正常な檻の中での願い事
松本 卓也
それらの視線
それらの仕草
それらの言葉
それらの感情
ただ心に浮かんだ気持ちを
少し呟いただけなのに
場違いな吐露とでも言わんばかり
ほんのここ数年間
伴侶といえる相手がいなけりゃ
他人の恋愛事に首を突っ込む資格すら
無くすというのかい
異常なのは僕の方?
経験や知識、見聞と感傷
全てを否定されて
ゴミが囁いたかのような
誰に否定する権利を与えられたか知らんけど
表現を無くした言葉の持ち主は
逃げ去って閉じこもるしかないじゃないか
正常な感情とやら
正常な同情とやら
正常な感傷とやら
正常な憐憫とやら
何が何だか知らんけど
どうやら口を開くすら場違い
異常認定に殺された主張
きっとすがすがしく振り返るのだろうよ
あらゆる言動が
現状の立ち位置によって
封殺される位なら
きっと何時も通り
此処に居場所など無いのだ
お前、何勝手に俺を決めつけて
そんでもって何か
俺より全てを上回るとでも?
思考を許されず
無言のまま追従するのが
正統な社会の仕組み?
そんなものをなぞる位なら
異常だと断定されていたい
嗚呼でも本当は
何もかも消してしまいたい
何もかも殺してしまいたい