夜の頁
桐谷隼斗

ぽっかりと 口を開いた 巣の中へ
吸い込まれそうな 私の心

 

風が繰る 世界はたちまち 瞬間で
今日はベトナム 気まぐれの地図          



さようなら 煙が風に 溶けていく
愛したあなた 言葉になって   



フラスコに 傾く夕日を 閉じ込めて
夜の頁を 赤で染めたい



星空を 掬うスプーンも 掬えない
それは君のこと だった気がする       


  
ぐつぐつと 煮込んだ睡魔に 浸かってる
私をさらって 逃げる夜に



こうこつが 白い舌に 伝わって
波と波が 重なり合う夜



とけていく ラジオの声も 音楽も
世界がぼんやり 戻ってく朝



あの雲に 坂道を下る 自転車の
速度で話した 夏の終わり



坂道に 張り付く影に 話してる
「君と僕は 孤独だねとても」



いつもより 静かな街で ひとつだけ
鳴り響くのは 私の心臓



短歌 夜の頁 Copyright 桐谷隼斗 2010-08-24 00:54:27
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