食べられるための蛙、特定外来種に成り上がる。
ブライアン

夜、雲がかかっているが、月は見えている。
けれど、星は見えない。
それは、晴れている日でも同じこと。

どこかに位置し、どこかに向かっている。
定まらない場所、正面。
真下を太陽が通過しているその時、
東か南かを決めるための決定権を
一台のトラックは持っている。

道を照らす電灯の光が連なっている。
橙色の光。立体ジャンクションを照らし出し、
そのトラックは、クラクションを長い間ならしながら走ってくる。
全身を邪魔するもの。
逃げ遅れた食用蛙の、黒く沈んだ体と声。
ボウボウ、と鳴く声。

トラックのハンドルが乱れている。
蛙をかわそうとしているのか。それとも、ひき殺そうとしているのか。
黒く沈んだ蛙は、ボウボウと鳴く。

ジャンクションの大きなカーブを
白線より外側へ出ないように、
それでも荒くれ者のように、
トラックは走る。

最後は何だって勘だけだよ、と。
トラックの運転手は語る。
それは誰にだっただろう。別れた彼女にだったか。
やけくそになって声をかけた女だったか。

長いクラクションの後、
踏みつけられた影は、月の光に残される。
茫々たる世界へ、この道は続いている。
運転手は、自らの勘に嘘をついているのか。
それとも、勘が狂っているのか。
それ以上に、未来ははるかに広大なのか。

茫々、と歌っている。


自由詩 食べられるための蛙、特定外来種に成り上がる。 Copyright ブライアン 2010-08-18 00:16:10
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