果実未満
千波 一也


まるで
夕立みたいな後悔のあとで
ぼくたちはまた
眠りへ向かう

汗と涙の共通点は
においのあるところで
においの流れ方だけがすこし違う
とても違う

虹がきれいに架かるとき
ぼくらは決まって潮騒のなか
遠かったり近かったり
全く同じ潮騒のなか

聞こえる言葉は稲妻みたいで
瞬きの間に溶けてしまう
それゆえ映画は
無くならない

まるで
凍土みたいな記憶をもって
ぼくたちはただ
夕焼けを見る

数えきれないほんとの嘘たちが
二度と苦しみませんように
傷みませんように、って
愚かなくらいに美しく





自由詩 果実未満 Copyright 千波 一也 2010-08-17 16:01:01
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