まぼろしの鳥
石瀬琳々
なきながら翼広げる影のあり雲間にもえる鳥のまぼろし
胸破り飛ぼうとするか呼子鳥光を背負いこだま待つ空
その薔薇を朱に染め抜いてわが小鳥囀る歌よ棘も忘れて
夏至の夜火を飼い馴らし見つめ合う見知らぬ森であなたとわたし
傘を捨て葉陰去りゆく思い出かためらいもせず雨も雫も
目を瞑り寄りそうほかなく二人して七夕夜に星を失い
雨のあと貝殻みたい黙り込むわたしの海はとても静かで
あの日から Adieu 囁くくちびるをまた過ぎてゆく夏草の駅
繰り返しくりかえしその頬骨にのばす指さき夏は過ぎゆく
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薊道