鉄棒遊び
あ。

重心をほんの少しずらせば
スローモーションに身体は傾き
世界はするりとひっくり返る


そのままで
そのままでいて
頭の上に足をつけたきみが見えるよ


わたしたちが歩く世界は
いつだってわずかにずれていて
当たり前だと感じている日常は
時にぽつんと遠い時間になって


きみの
ほこりっぽいスニーカーのつまさきに
名前も知らない花が見えるね
今のわたしにはそれだって
足の裏を流れる雲と同じで
どこか曖昧な出来事でしかなくて


その震える花びらに触れたくて
思わず両手を差し伸べる
瞬間に身体は支えを失う
雲はわたしの頭上に戻り
花は突然の風に大きく揺れた
世界が再びひっくり返ったことを知る


だらりと伸びた手のひらからは
鉄と錆びの匂いがした
懐かしいくたびれたスニーカーは
砂のひとつぶだってわたしには遠かった


自由詩 鉄棒遊び Copyright あ。 2010-08-05 23:58:08
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