めぐり ひびく
木立 悟








忘れては夏の水底のぞきこみまばたく広さまばたく遠さ



無音から無音に至る無音には尽きた灯の色ただ打ち寄せる



激しくも涼しき雨を走り抜け糸ぬぎ捨てる人ぬぎ捨てる



丘を呑み夜の呼吸を聴いている雨の時計の止まりゆくころ



しずかな穂しずかなむらさき金になり低い森へ夜へ流れる



どこまでも悲しい子の手を引いてゆくどこまでも花どこまでも花



陽の音が雨の上から降りおりてひとつの花をめぐり響く日
















短歌 めぐり ひびく Copyright 木立 悟 2010-07-30 11:04:00
notebook Home