千年
はるな
スプーンを傾けるその角度さえ愛しいままに百年が過ぎ
カーテンの揺れるはやさに追いつけず取り残されて百年が過ぎ
指さきにのこる温度をたぐり寄せ記憶撫でるだけ百年が過ぎ
晴れわたる窓のむこうに世界があるとしりながら百年が過ぎ
ゆめを見ず現実も見ずただひとつ恋をみつめて百年が過ぎ
色褪せる絵画に色を足したよな極彩色で百年が過ぎ
逃げるにはあまりにも遅いことを知る思い出も無く百年が過ぎ
真実も嘘も境目なくして想いだけがある百年が過ぎ
肌もなく髪も目もなく臓もなくたましいだけで百年が過ぎ
千年を繋いで過ごす約束を信じてもなお千年は遠く
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ちりぬるを