千年
はるな



スプーンを傾けるその角度さえ愛しいままに百年が過ぎ

カーテンの揺れるはやさに追いつけず取り残されて百年が過ぎ

指さきにのこる温度をたぐり寄せ記憶撫でるだけ百年が過ぎ

晴れわたる窓のむこうに世界があるとしりながら百年が過ぎ

ゆめを見ず現実も見ずただひとつ恋をみつめて百年が過ぎ

色褪せる絵画に色を足したよな極彩色で百年が過ぎ

逃げるにはあまりにも遅いことを知る思い出も無く百年が過ぎ

真実も嘘も境目なくして想いだけがある百年が過ぎ

肌もなく髪も目もなく臓もなくたましいだけで百年が過ぎ

千年を繋いで過ごす約束を信じてもなお千年は遠く




短歌 千年 Copyright はるな 2010-07-29 02:47:42
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ちりぬるを