砂糖菓子少女
梨玖

私は砂糖菓子で出来ている



科学者の興味で作られた
私の体は砂糖菓子で出来ている


誘え
誘えと
中から声が聞こえる
あまい身体で男を誘惑しては
愛されることに溺れていった


男達の熱い胸板よりも
ながいながい指に掻き回されるよりも
私は貴方に
頬を撫でられる感触が
何よりも好きなのに

その眼鏡越しの瞳は
私を道具とでしか
写していない


私が男達に抱かれるのは
貴方に愛されない悲しさを
辛さを
紛らわすためであると
貴方は
如何して気付くだろうか


最初に目を開けた瞬間に
映ったのはその眼鏡越しのきれいな瞳だと
最初に抱きしめられた
あの白衣のあたたかい感触を
忘れられないのは
恋をしているからだと
貴方は
如何して気付くだろうか


私を愛して、と
中から聞こえた
私を赦して、と
中から聞こえた

こんなにも愛欲に溺れた私を
受け止めてくれるのは貴方だけだと
信じている
助けて欲しいと願うたびに
抱きしめて欲しいと願うたびに
貴方は私以外の女を見つける
貴方は私以外の女を作る


私を愛して、と
中から聞こえた


欲望の言葉は止めることを知らず
産声をあげる


目から流れる
甘い水飴を床に落として


退廃していく
この白い身体を残して


自由詩 砂糖菓子少女 Copyright 梨玖 2010-07-20 21:51:40
notebook Home 戻る  過去 未来