火星まで
天野茂典
街の路地にはきょうもヤクザな
SCORPION
あんたは晴れやかに狂っていた
さくらふぶきでもないのに
あなたは酒に狂い ヤクにおぼれていた
あんたの歌なんてききたくもない
もみじのように発狂する
/猿
SCORPIONS
前頭葉が氾濫し
ひろえるひとつの情事もありゃしない
興奮している媚薬の天体
いくつもの乳房がぶらさがり
/ゆれ
/ふるえ
/痙攣し
どこまでもかなたへ堕ちようとしている
さくらふぶき
でもないのに
狂い咲いている
(血柱 ヤクに溺れて
飛んじまった
あんたのことば
FUCK YOU
熱帯雨林のキラメく蝶が
いっせいに飛びたつのはそんなときだ
蝶の狂気
ふうらり
/ふらり
蛍のように
密集し
銀河のように
あんたをつつむ
蠍座の男には愛がない
いきなり狂う
樹脂なのだ
液化した写真には
だあれも映っちゃいないんだ
そうさ『零度のエクリチュール』*
季節はずれの
/さ・く・らがふぶいて
/いっせに蝶が舞う
狂うことは
/hitoriの
性的快楽なのだ
(視覚野の
*ロラン・バルト 2004・10・13