『だから身体カラカラだ』 [五行歌作品]
ま のすけ

  爪の
  ニオイをかぐ
  わたしがまだ
  わたしであることを
  ひそかに確かめる


   +   +


  舌で
  前歯の裏側を
  トトトと叩く
  さも大切な
  儀式のように


   +   +


  いつのまにか
  私の尻尾が
  あなたの肩から生えていて…
  あぁ、夢でよかったね
  お互いに


   +   +


  ところでかかと
  生えているのだろうか?
  それともただ単に
  くっついているだけ
  なのだろうか?


   +   +


  足の裏は
  すこぶる悲しい
  こんなに移動したのに
  黙って靴の中底を
  踏んでいただけだなんて


   +   +


  つま先は
  いつも前向き
  ひかえめな
  私の
  なかで


   +   +


  私の足を
  返して下さい
  カンボジアで
  アフガンで
  そしてイラクで


   +   +


  されこうべの内に
  魂と温度と
  水の流れを宿す
  あぁ私
  今、生きている


   +   +



  五行歌交流誌『南の風』既出
    /一部修正 平成二十二年七月十日


自由詩 『だから身体カラカラだ』 [五行歌作品] Copyright ま のすけ 2010-07-10 16:52:35
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