もういちど
なを
たとえばあなたが
もういちど
と、
あふれるように願ったなにかで、
きっとこの世界の半分はできている
誰かのへたくそなギター
雨と雷と虹
ひかり満ちる午後の電車
屋上のラジオ
割れたレコード
バナナケーキをきりわけるナイフ
Happy birthday song
ゆびとうでと肩
汗のにおい
まぶたのうらの蝶々
はためく青いシャツと
ことばにできない、ということばしか捧げられないくらい
うつくしい微笑み
もういちど
と、あふれる血のようにあなたが
(あまねくこの世界にみちるすべてのあなたが)
祈ったなにか
で、
この世界の半分はできているはずなのに
(初出/めろめろ31号 改稿/「miel」2号 藤坂萌子発行)