梅雨に咲く花のように
中原 那由多

光を切り裂いたカーテンの色は青く
寝癖はやっかい、目が腫れぼったい
母親が漕ぐ自転車の後ろにしがみつく派手なズボンの幼稚園児が
男の子なのか女の子なのか判別できない
それを何気なく追い越してみた時に

不意に夏の匂いがやってきた


屋上、窓、霧雨、白い無機物は今日も笑わない

落書きの中に隠した本音が
次に目を覚ますのはいつ頃か
前の席に座る男は自分の背中に書かれた
「BATTLE FIELD PHOTOGRAPHER」 の意味を理解していなさそうだから
サイゼリヤの壁の天使と同じ表情になっていた


同一視、赤のテレキャスターは
ひずむ決断を感電させる

神経衰弱をするようにまばたき
目の前に現れて欲しいものは綺麗な嘘

期待するほど息苦しくて
油断するほど手にすることができない
空白で寝て起きてを繰り返して
やはりデジャブという過ちを探してしまう


公団住宅に隅へ追いやられた紫たちは
雨の降る場所ならどこでもかまわないらしく
すれ違いざまに故郷を思い出させてくれた

一つが埋まれば一つが欠けるけれど
一つが欠けても一つは埋まらない

それを補うことが自由の責任か




自由詩 梅雨に咲く花のように Copyright 中原 那由多 2010-07-02 22:56:27
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