蒼春
寒雪



若かった頃僕らは
いつも僕の部屋で
無駄話をしながら
雑誌を読みながら
やがて訪れる未来を
熱にうなされるがまま
夜が明けるまで
語り合っていた


若かった頃僕らは
どこに行くのも一緒で
楽しいことも
大変なことも
辛いことも
泣きたいことも
みんなみんな
僕ら二人で分かち合った


何をしてもやり直せたはずの
あの頃
僕らは
僕らの夢を信じてた
空だって飛べる
いや
宇宙にだって行ける
他人には
笑い話に違いない
でも
その時の僕らは
本気だった


高校の裏山で僕ら二人
ポケットウィスキーを
回し飲みしながら
見上げた月の青さを
忘れることが出来ない


なのに
終わらないメロディが
突然途切れる
壊れたレコード盤のように
僕らの時間にも
終わりの時がやってくる
僕の前で
灰色の空を見つめながら
何も言わずきみは
ただ泣くのをこらえてた
そんなきみを見るのは初めてで
思わず僕も涙ぐむ


別れ際に
きみが差し出した手を
僕は思わず強く握り返した
その時僕の中で
何かが弾け飛んだ
そんな音が聞こえた気がした
僕らは僕ときみになった
これからは僕一人で
歩んでいかなければならない
心の中で
繰り返し繰り返し
そう呟いた


自由詩 蒼春 Copyright 寒雪 2010-06-30 05:18:42
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