マングローブ・ヨガ
楽恵


7日に蛭木の浜に下りていき
ヨガをする。
足の爪先から、踵まで、ゆくりと着地する。
干潮を合図に背中を反らせ、アーチを模る。
オヒルギとメヒルギが
音をひらいて絡み合い
嘆いて赤土を溶かせ、浅い河に注ぎこむ。
くいこみ生まれたて
蛭木の根は、順調に伸びている。
巨大な空洞部分に向かって
地下に染み込み同化する

汐をたっぷり含んだ
発芽。

吸い込めば潮は満ち
吐き出せば遠く退く
環礁は砕けて白く
湿地帯に逆流し、堆積する粗い砂は
滅びた珊瑚の死骸を
太古の泥に被せる
(植生のポーズ)

苦しさで息ができない。それでも浜辺のヨガは続く。
(群生のポーズ)
体勢は三日月。
(密生のポーズ)
椰子の気配は一帯となり
マングローブの組織を形成する。
一艘のカヤックが揺れ
鬱蒼とした河口に飲み込まれる。

夜明けに、海は真っ赤に染まっているだろう。








自由詩 マングローブ・ヨガ Copyright 楽恵 2010-06-26 20:35:09
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