胃痛
榊 慧

リンゴ酢のみたいんだよ。
ことのほか響く声にびっくりしながら残っていたもう一人のクラスメイトを見やる。彼は恨めしそうにこちらを見ている。「ありそうでないな。」「ありそうですらないよ。」机の中に適当にほうりこんでおいたイディオムのプリントを「全部すてんの?」、全部すてるよ、うん。「だってこれ全部俺が入院してた間のやつだろ。」「やれよ」「やだよだってところどころ無いんだしふざけてるよね」「何処が」「……もしもし、」電話をかける。俺は彼を馬鹿だと思っている。ああ眠い。


外が明るい。五時?
俺は汗を不快に思いつつ掛け布団を畳む。また同じだったとかそういうことを考えながら下の階へ降りる。生えている木が見える。生えている。なんだかぬめっとした色だなあとぼんやりする。またかあ。また寝られなかったよ。こうやってぬめっとした色の生えている木にメッセージを送るのもまただ。眠い。気がする。眠い眠い。なんで胃が痛いのかなあ。ぼんやり。胃が痛いから眠れないんだろうなあ。起床時刻は六時三十分。寝られないだろうけど、今寝られたとしたら確実寝過ごすよなあ。

足が冷たい。ずっと起きていた夜の次にある朝はいつも足が冷たい。
またノート写ししようとしてベッドに戻ってしまった。
後悔する。でも胃が痛いのは俺にはどうにもならない。なんでだろうか。俺の胃だろう?


 *

五時三十分。
六時。
腹が痛い。朝だ。何も無い。泣いた。吐いた。スタディジャンキー…?
リンゴ酢を飲んですっきりしたい。じくりと胃が痛む。この世は踊ってるやつらばかりだ。踊る。俺はその輪を見つめている。夢だけが踊っているんだ俺は。






散文(批評随筆小説等) 胃痛 Copyright 榊 慧 2010-06-24 06:21:31
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