とうとう聖痕を得てしまった僕の友達について
真島正人




君の調子がどうだか
気にならないし
君の虚偽が
いくつずつ
世界の果てに通信されていくのか
知りたくもないよ
この世は
通信教育なんかじゃない

僕は昨日
大型書店の
人文科のコーナーにいたし
一ヶ月前は
図書館の
科学のコーナーにいたのさ

そんな静かな場所から
雨漏りを見つめている

雨漏りは
目に見えないって君は言っていたけど
それは嘘だなってとうとう気づいたよ

雨漏りは
雨漏りとして
見る必要がない

君が虚偽を気にするわりには
それを信頼していること
そのことを

当てはめて
解を求めればよかったんだ



午前中に出しておくクリーニング
去年、湿気てしまった愛が化石になり
その代わりに密度が増してる

抱きしめて暖めておいたよ
写真でも撮ろうか

それから
洋服を取りにいこう

だってもう午後

時間の過ぎ去り方は
方程式を逸脱している



戻っていく君

君の誇らしげな顔が
高等部の校舎脇にかすんでいる

君は白い壁によく似合う笑顔で
まっさらな制服に身を包んでいる

汚されることが
約束されているんだ

僕の位置からはよく見えるよ
君のその
新品の制服のカラーににじみこんでいく
土ぼこりと汗と
古くなって離脱した皮膚の組織が……

君はその、

もっと、
たくさんのものを捨てていくべきだった
皮膚が

更新され
捨て駒のように

切り離すように
君自身ももっと

もっと

たくさんの君の
内側に
潜むものをさ



ここから
ここまでと
線引きをして

そこから
好きな場所を覗く望遠鏡が
欲しいけれども

どんな
古い町の
骨董品屋さんにも

置いてはいないよ

君があるものの形を
仮に
聖痕として受け止めたように

そこから幾滴か血が
形而上の出来事のように

流れ出たように

僕は僕なりの
あるものの姿を探してる

君は僕を
効率が悪いと罵り
僕は君を
悲しい目で見つめているよ



二人の
住む町が

同じ時間に
誘導
されていけば良いな

数え切れぬほどの
緑の木々が
いつか僕たちをねぎらって

そしていろんなことを
忘れていける

望遠鏡から
覗き込まない日々が
形を
与えられればいいな



願わくば

うとうと眠り、
気がつけば
全部忘れているような
そんな幸福が
満たされた
場所を

見に行きたいな

遠い昔の
母親の
誰にでも
一度はきっと

与えられたあの

太陽のにおいのする布団のように

許されてそこに
潜り込みたいな





自由詩 とうとう聖痕を得てしまった僕の友達について Copyright 真島正人 2010-06-23 00:13:59
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