おさかなについての五品
山中 烏流
*うおのめ
この目は
多年草に分類されるらしいので
潰すたびに
痛みを訴えたりする
だいぶ前からの付き合いなので
最近では
勝手に声を上げたり
膨らんだりすることは
少なくなってきたが
いつもの絆創膏では
お気に召さなくなったのか
どれだけ労わってやっても
なかなか
離れてくれなくなった
*たいやき
しっぽの方まで
ぎっちりだからといって
人気が出るとは
限らないのです
同じように
ちょっとの工夫や
わずかな個性なんかでは
ひとの目はひけないのです
だから
どんどんと、
増えて行くばかりなのです
*しーしぇぱーど
草むらに船を放れば
進めないので
彼らは
とても聡明である
きっと
肉食のほうが
おいしいおにくなので
つまり、彼らは
とても
聡明である
*にんぎょ
水掻きがおいしそうだったので
食べてみると
意外と
スナック感覚で
いけてしまったので
尾ひれもいってみた
とげとげした鱗のせいで
えらが
閉じてしまったけど
歩くことが
思ったより楽しかったから
気にしない、ことにした
*いわしぐも
今日は鮭のムニエルが食べたい
鮪丼は昨日食べたから
ツナ缶を開けるのは
明日にしよう
酷く聡明な彼らに
草むらで追いかけられでもしたら
確実に
悪夢を見そうだから
鯨に手を出すのは
もう少し、経ってから
タイムマシンで過去に飛ぶのも
アリかもしれない
けど
やっぱりそれも
未来の話だから
結局また今度、ってことで
サランラップを外す