去季
木立 悟
砂に消える火
煙さえ無く
手は振りかえる
軒下の蝶
昼の音の波
ぬれた器
ただひりひりと
なぞる指
遠く離れた
同じ手に降る
聞こえないのに
聞こえる拍手
白い部屋を出て
白い道をゆく
ときどき跳ねる
ふたりの子
そこに無いのに在るものへ
焼けた札をちぎりゆく
つもり つもり
見えるかたち
水と灯の息
霧を打つ火
さらに遠くの
冬へ響く
自由詩
去季
Copyright
木立 悟
2010-06-13 15:29:54