手紙
月乃助
海の向こうから来た手紙
躊躇わない見慣れた文字が、
心に触れるのです
確かに
生きる意味があるように
昔を思い出す、力が湧いてくるような
元気でいらっしゃるのですね
少し怒りっぽい
饒舌な文は、あの頃のまま
白い便箋の中で右肩上がりに踊っていました
さりげない想いやりさえ
きっと、私に向けた笑顔だって、
変わることもない
背のびをした私の道しるべだった
一緒にいるだけで、涙が流れました
いつも、どこかにある答えを探しながら
二人だったら見つけられると信じていた頃
いつまでも一緒にいようと
子どものように会いたがった
とめられなかった
未来を、手にしていると想ったり
幸せが待っているとばかり、
海の広さ
その水の深さも 時の長さも
あなたを忘れさせてくれはしない
ここの暮らしなど
愚かなことしか思い付かなくて
指に絡まるかたい髪に
なんども触れた 夜
それを今頃 思い出すなんてね
暗闇があんなにも安らかな場所だと教えてもらった
幸せとふしあわせの間が、
手紙を書かせたのでしょう
それなのに、こんなにも懐かしい
心の隅に隠れている
あなたに共鳴するのですね
けれども、もう戻れない 永遠に
もとめるものは、
ここにはないのです
そう、返事を書きましょうか、
しっかりと
生きて いかなければ
いけないのですから