あのポスト
たりぽん(大理 奔)

学生時代に旅した外国で
たくさん手紙を書いた
両親や兄弟や友人へ

砂漠に近い
ひどく乾燥した扇状地の街
ボロっちいホテルの一室で
二度とはき出せないような
甘い寂しさの詰まった手紙を書いた

 (大切な女性に)

ホテルの受付カウンターに組み込まれた
古ぼけたポストに
それは必ず投函された
私がその細い隙間の奥に
手紙を押し込んだのだから


結局、その手紙だけが届いていなかった
詰められた言葉はどこに消えたのか


ふと、夕日に染まった岩山の見えるホテルを思いかえす

手紙はまだあのポストの中のあって
勇気を振り絞った私の言葉を
人知れず抱えているのかも知れない

そしてポストはこの胸の中にあって
あの暗闇とつながっているのかも知れないと


自由詩 あのポスト Copyright たりぽん(大理 奔) 2004-10-10 01:24:08
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