あんなにたくさんの人が
真島正人



あんなにたくさんの人がいたのに
今はほとんどいない
どこに行ったのだろう

死んだ訳じゃあるまい
消えた訳じゃあるまい
なのにどこにもいない

あんなにたくさんの人
あんなにたくさんの歌が
あんなにたくさんの書物
あんなにたくさんのファンが
どこに行ったのか
どうしているのか

すべて嘘だったのか
すべて幻かい?
そんなことはあるまいが
ある時代の空気が
ある時代の空気が
消えていく
更新されていく

あ、あ、あ、あ

もういいのかい
もうこりごりかい
犬になるのかい
虫になるのかい
細々と行くのかい
逆に行くのかい
知らんぷりかい

君は君は君は君たちは

あなたもだ
あなたも
あなた方も

あーあ

あーあと伸びをして

口の先から
大気を吐いて
体はくたびれ
さび付いて
足を開けば
砂ばかりだろう
しけているのさ
乾いているのさ

心地の良い
音楽が聴きたいな



見渡すかぎり
何もない荒野

見晴らしのいい場所なら

まだ良かったのに

荒野は狭い部屋

シックハウス症候群でも
引き起こしそうなタイル

漆喰

花をさしてすらいない

あんなにもたくさんの足あとも
簡単に地ならしされて
誰もいなかったかのようになっていく

少し眠っていた人は
不幸だ
目が覚めると
誰もいないのだ

少し眠って
いいタイミングで起きられたら
僕もみんなと一緒に
消えられるだろうか

不機嫌な主張
深い恐れは
霧散して

気持ちがいいほどに高い
山だけが立っている
仙人の国


行こうよ
心地いい
嫌なことを
忘れられる場所へ

なんだそっか
みんなそれで
出て行ったんだ


自由詩 あんなにたくさんの人が Copyright 真島正人 2010-06-06 01:16:33
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