douze
ピッピ

?.


「俺は白だ!」空が泣いていた。空は自分のことを白色だと信じて疑
わなかったのだ。「違うよ、君は青色なんだ」「嘘ばっかり!」どう
しても聞いてくれない空に、僕は鏡を持ち出した。鏡一面には、真っ
青な空が映っていた。空はみるみる赤くなり、やがて沈んでいった。


?.


いだろ」「そんな…」芙美江の股座から溢れる蜜を掬い出し、芙美江
の顔に近づける。すっかり濡れてしまった龍彦の指に、芙美江の吐息
が降りかかる。「そろそろ、挿れるぞ」「止めて」芙美江は龍彦の躰
を押し退けようとしたが、龍彦は力尽くで芙美江の膝を割った。「へ


?.


妖精は、今日も生まれてきた。いや、生えてきた、と言ったほうが正
しいかもしれない。その森では、一年に数回、妖精が生まれるのだ。
妖精が生まれる樹はまるはだかの樹、満月の夜に少しだけ開いた蕾の
中から、妖精は生まれ出る。その途端、蕾は枯れてしまう。この樹に


?.


涙を擦ると目が出てくる。嘘?カレンダーをめくるとそこはもう雪國
だった。嘘?配布ァイ老婦ァイ。嘘?アメリカは米でしょーパラグア
イって腹って書くんだよ。嘘?あれって全部口パクだよ。嘘?ラーメ
ンって美味しいよね。嘘?コギト・アルゴ・スム。嘘?ピッピ。嘘?


?.


いは募るばかりだ。明日。明日は何て言おう?明後日は?明々後日は
?一年後は、何と言っている?先のことは考えられない。でも、いつ
かは何の隔たりもなく笑い合いたい。キスがしたい。繋がりたい。結
婚したい。子どもを。そうやって、欲しいものはどんどん増えていく



?.(*1)


ルの並んだ。コンビニの奥の奥に潜む。あたかも人目から遠避けた場
所へ。隠れることはできない。しかし。どうせ真夜中と言うものは。
人目を遠避けるものなのだ。この昼みたいな。24時間コンビニさえ。
孤独しか居ない。店員も居ない。無機質な防犯カメラが。レジを打っ


?.


何のサインもないまま、球はゆっくりと傾いて落ち、少女の胴体を貫
通した。少女は目をゆっくりと閉じて、地軸の軌道を確かめていた。
地軸はバイクよりももっと速い。しかし少女はバイクを知らない。少
女は鳥の形を思い描いたが、それはいつまでも自転に追いつけない。


?.


言い方一つだと思う。例えば「愛」と「とろろ昆布」は、結局同じも
のなのだ。言葉が内包しているのは意味だけじゃない。それが相手に
とってどう伝わるか、というのもあるが、言葉自身も「どう伝わって
欲しいか」という欲求があるはずだ。言葉の形、というのは、そのあ


?.


息苦しい帰り道を抜けて、ようやく家の鍵を開ける。ただいま。そこ
には何の生物の気配もない薄暗い空気が、早く外へ逃げたいと、一生
懸命藻掻いていた。私が歩くことで漸く落ち着きを取り戻した私の家
、だけど、私の心は、暗闇に馴染むほど、いつでも穏やかではない。


?.


「蚊が飛んでる」「蚊?冬なのに?」「いない?そう…網膜剥離の症
状に、そんなのを聞いたことがあるわ」「また。君はそうやって、す
ぐに目の病気に結びつける」「だって…」「涙の流しすぎは、病気な
んかじゃないよ」「それは」「笑って御覧ってば。そうすれば、きっ


??.


夢は高速道路を抜けて、人々へ支給される。夢はもともと、錬金術師
が作り出したものだった。材料はここでは言えない。それは少しの匂
い、少しの味、少しの形状、少しのスペース、そして記憶を司る部分
への刺激により、形を変えるものなのだ。瞼が痙攣した時が、そのサ


??.


風が吹いている。もうすぐ世界中が溶けそうな夜である。灯は一箇所
ずつ消えていき、ついには地球を真っ黒に染める。人が人の形でなく
なる瞬間。大きな球は飽和状態を保ちきれず、ついにはどこかで千切
れ、そしてまた人の形となる。夜が終わる。一瞬だ。さようなら。あ








(*1…引用 真夜中の呪縛/ピッピ)


自由詩 douze Copyright ピッピ 2004-10-09 20:18:17
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