哀しみという名の街で
未有花

哀しみという名の街で
二人 出会ったの
涙雨の降る街角
空も泣いていた午後

さびしがりやの恋人たち
ガラス細工の傘を差して
色褪せた通りを歩いていたの

心の傷跡なぞるように
冷たい雨が降り続いて行く
誰でもいいからそばにいてよと
二人 出会ったの

哀しみという名の街で
二人 恋に落ちたの
赤い屋根のカフェテリア
空も頬染めた午後

さびしがりやの恋人たち
白いテーブルをはさんで
言葉なくしたようにみつめあうだけ

二人の他には何もいらない
差し込む夕日に照らされてずっと
このまま時が止まってしまえばいいと
二人 恋に落ちたの

哀しみという名の街で
二人 別れたの
涙雨の降る街角
空も泣いていた午後

さびしがりやの恋人たち
ガラス細工の傘も差さずに
色褪せた通りへと飛び出して行ったわ

ひとりよがりの恋に疲れてしまった
すれ違う心に気づかずにいつか
愛は雨に濡れて冷めて行ったと
二人 別れたの

哀しみという名の街で


自由詩 哀しみという名の街で Copyright 未有花 2010-06-03 09:47:45
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