鉄格子の中で
デラシネ

友はなく親はなく愛した男は幻で
言葉は誰にも通じない
叫び出せば注射を打たれて
硬いベッドに縛られる

最後に私の魂が バチンと潰れる音を聞いた
床に落ちた虫けらのように 唸る

まだ唸る 
唸る
唸るのは
私が苦しんでいるのではなく
遠い地に預けられた娘の苦しみ
涙もでないほどに泣けてくるのは
遠い地で私を恋しがる娘の涙

抱きしめたい

言葉を失くした私とまだ字の読めない娘
唸り叫びだしそうな胸を押さえ
鉄格子の中で
やっと借りれた黒鉛筆を握りしめ 描く花

「これはおまえに似ている どうか笑って」

小さな茶封筒に詰めこんで送る
きっとあのばばあが捨ててしまうだろう


自由詩 鉄格子の中で Copyright デラシネ 2010-05-27 16:31:28
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