雨粒の木霊
within

葉緑体がうごめきはじめ
水の粒子が
細かくも玉になり
肌に薄く膜を張っても
心踊らない石礫が
川原に帰りたいと呟いて
乾いた舌が口の中で途惑う

手を伸ばして
掴みたいものなんてなかった

目の前は
どこまでも空気だ
魔法の入り口の先が
出口ではなく
入り口で
白紙の契約書には
何も約束されていない
呼吸すること以外
何も許されていない

何もないとわかっているのに
舌先は空気を探る
新しい物語を探す

あなたの尖端
温もりの尖端
痛みの尖端を
長雨で
寒々と冷え切った
すっからかんの体幹を
焦がす
脈動を探している

泡沫の日々であっても
ずるいと陰口を叩かれても
水たまりを
長靴を履いて
歩きたい


自由詩 雨粒の木霊 Copyright within 2010-05-26 08:32:19
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