四季
かんな

春「許せない春」


桜ふぶきが目に入る
淡く、幼い恋に似ていて
ほろりと涙がでた

花びらをひとつ
つかむと握りしめていた
肩をなでていく、風を感じる

許せるものを
この手のひらに集めて
すべてを放ったら

ただひとつ
残ったものは春だった



夏「夏のゆらぎ」


もう、すこし遠く
逃げ水を追うように
地平のはざまをかすめる

揺らぐことが
存在を確かにするように
おもいを推敲する

陽射しに向かい
ひまわりの種をかじり
あの夏を、証明する



秋「夕焼けヒッチハイク」


野原の端っこで親指立てた
通り過ぎてく風たちが
カッコ悪いぜと呟いて

小さな小指を立てたなら
指輪をつけてあげますよ
シロツメクサがささやいた

人差し指を立てたなら
トンボが止まってくれるかも
白い月が教えてくれた

それなら野原の真ん中で
大きく大きく手をふって
真っ赤な夕陽を見送ろう



冬「雪々」


踏みしめる雪は
音もせずに
わたしを
何処かしらへと
連れて行く
その途中で

いつも
考えることは、そう
降り積もった雪が
幾ばくか
沈黙をやぶり
音を立てる

その瞬間に
抱えていただろう
正しさとか
誠実さとか、まだ
知りえない感情の
渦の中で

雪また雪
それは果てない
何とも形容しがたく
人生の
道の途中できらめく
結晶たち




自由詩 四季 Copyright かんな 2010-05-25 16:49:52
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